千葉県では、千葉市を取り巻く大都市とその他での郊外で葬儀事情が大きく異なっています。その中でも大きな特徴は、前火葬と後火葬が一つの県で混在している事でしょう。前火葬というのは、通夜の翌朝に火葬を行い、その後に葬儀と告別式をする形式の事をいいます。
この形式は東北の一部地域では一般的なやり方ですが、関東では珍しいケースです。前火葬は千葉県では主に館山市などの房総半島で行われており、納骨もその当日に済ませます。また、一部地域では、「葬式組」や「班」と呼ばれる昔ながらの近隣住民による組織が未だに機能していて、近所の人達で寺院への連絡や葬儀の準備などが執り行われていて、数十名単位で全ての段取りを取り仕切るケースもあります。
この風習は農村部や房総地域に残されていて、都市部では合理化されており、今では見る事ができない物となりました。
千葉県に残る独特の風習の一つに長寿銭と呼ばれる物があります。五円玉の穴に紅白の紐を通し、同じく紅白の水引が印刷された「長寿」と書かれた小さなポチ袋に入れ、会葬礼状と一緒に参列者に配る物です。千葉県の他、群馬や埼玉の一部地域でも見られる物で、故人が長寿を全うされた場合のみに用意します。
持ち帰ると「長寿を全うした故人にあやかる事ができる」とされており、いわゆる縁起物の一つとされています。故人の徳にあやかるという点で、全国各地で見られる撒き銭と同一の種類の物と考えられています。金額は五十円、百円の場合もあり、百円と五円を合わせて百歳にご縁がある様にとする場合もあるようです。
農村部に残る風習で「年寄り講」と呼ばれる老人たちが太鼓を叩き、遺族と僧侶がお題目を唱えるという葬儀がありますが、その場合には「志」と書かれた袋に銭を入れて配ります。